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小説風例会報告(長文注意…ごめんなさい…書き始めたら止まらず…) 6月8日例会 とろろ報告
○参加者(敬称略):S石先生、ホッソオ、オタQ、むらっち、とろろ

○活動内容:S石先生からの手筋・死活の問題プリント、S石先生の指導碁

○報告担当:とろろ

 その日T氏は、久々に例会の開始時間に間に合うように参加することができた。いつもと違い、この日は仕事が休みになったからだ。しかし例会所に着くまでの間、T氏の心を支配していたのは喜びではなく緊張感だった。というのは、この日T氏には一つの使命があったからである。それは、囲碁部の宣伝パネルを作る計画を進めるという使命だった。3か月も前に話したことであるにも関わらず、ほぼ何も進んでいないのだ。

 例会所に入り、しばらくするとM氏がやってきた。M氏は挨拶もそこそこにサクサクと碁盤を取り出し、詰碁の問題を広げ、石を並べ始める。さすが碁打ちである。T氏は読もうとしていた本をカバンに戻し、一緒に問題を見つめる。そうしているうちに、S先生やオタQ氏、H氏がやってきた。いよいよ使命を果たす時である。しかしT氏は使命を忘れ、詰碁の問題を解き続けていた。
 
 T氏が我に返ったのは、ある問題を間違えた時であった。直感で、ここでは、と示した手に、S先生があっさりと、それは間違いだというのである。少し見直して答えにたどり着いたものの、先生によるとその問題は3分で解けたら初段、というものらしい。一応碁会所で四段の自分が、とショックを受け、それでなぜかその日の使命を思い出したのだった。

 M氏やオタQ氏がS先生の指導の下、キリのいいところまで詰碁の問題を解き終えるのを待って、T氏はパネルを作る話をしようと持ち出した。これで第一の関門は突破した、とT氏はほっとした。碁打ちの集まりである以上、打ち始めたら止まらず、話し始める事すらできないのではないかと危惧していたからだ。

 とはいえ、大事なのはここからである。グダグダとして話がまとまらなければ意味がないのだ。しかし、T氏の緊張感がまるで無駄だったのではと思われるくらい、話はサクサクと進んだ。事前にT氏がオタQ氏とある程度打ち合わせていたこともあるけれど、皆が思っていた以上に協力的だったのだ。そして話はT氏が最も理想としていた、決めるべきことを決め、後は一旦オタQ氏に任せる、という形で終結した。

 これで今日の使命は果たした、とT氏が一息つけたのは、まさにほんの一瞬でしかなかった。というのも、S先生の提案で、H氏、オタQ氏、M氏、T氏対S先生の4面打ちの指導碁を受けられることになったからである。こうなっては一息つくなどと言っていられない。碁打ちの血が騒ぐのだ。T氏は棋譜を取るためのIPadをカバンから取り出し、6子置いて頭を下げる。

 序盤は6子も置いてあるから当然ではあるけれど、悪くはないように見えた。中盤も悪いようには見えなかった。むしろ勝っているとさえ思っていた。そんな心の余裕からちらりと隣のオタQ氏の様子を見て、T氏は驚愕した。オタQ氏が棋譜を取っていたのである。いや、それだけなら驚くことは何もない。驚くべきなのは、オタQ氏は最初は棋譜を取っていなかったということである。それはつまり、オタQ氏が中盤までの手をすべて覚えていたということを意味しているのだ。

 やはりオタQ氏はいずれ自分の大いなるライバルになるであろう…。T氏は戦慄し、自分も身を引き締めねばと自分の碁盤に目を戻す。もう一度形勢判断をしてみたけれど、やはり悪くはない…。しかし、そこに油断が生じていた。T氏は、一つの大きな見損じをしていたのである。
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 それはこの部分だった。白a、黒b、白c、黒bの下、で目が一つつぶされるのには、T氏も気づいていた。その上で、dに打てば、acの抜き跡とdの上で二眼作れる、と思っていた。dの上のところが欠け目になりそうな形であることにも気づいていたけれど、そうするためには白eが必要。つまり、白がeにきたら黒bで白を抜いておけばよい、と思って放置していたのである。

 世の中には失って初めてその大切さに気付くことがある、という。同じように囲碁でも、打たれて初めて気づくことがある。想定通り白aから黒bの下、と打った後に白eと打たれ、そこで初めてT氏は自分の大いなる勘違いに気づいたのだ。思わず「あぁしまった!」と声が出る。

 結局その碁は、S先生の好意で黒b下のツギを黒eと打ち直させてもらい、時間の都合で打ち掛けとなるまで打ち続け、形勢は黒がいいだろうということになり、T氏はさっきとは逆に思わず喜びの声をあげてしまったのであった。

 だが、とT氏はその帰り道、思った。はたして喜んでよかったのだろうか。あの見損じは碁打ちとしてあるまじき失態である。さらに形勢が良いと言われたのだって、あの見損じを打ち直させてもらった結果だし、そうでなくてもあの後あちこちヨセられて結局負けていた可能性だって高いのだ。だからあの時喜ばず謙虚に、ありがとうございましたと頭を下げるべきだったのだ。

 あぁ、もう決してあのような失敗はすまい。そしてもっと謙虚な態度を取るようにしよう。そう雨の空に誓った、金曜の夜であった。 完


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by deafigo | 2018-06-09 02:34 | 囲碁教室日記 | Comments(0)
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